ますます人と会いたくなくなる悪循環

対人恐怖。これほど私を悩ませたものはありません。人間は、他の動物と違い、食べて寝て繁殖して…というだけでは生きれません。
いわゆる社会的な生きものとして、人との関わりの中以外で、生きていくのは困難です。
なぜなら、お金も幸せも、人から人へともたらされるからです。自分ひとりで簡潔する仕事も、幸せもありません。
なので、人とつながれないこと以上の精神的苦痛は無く、人と良好な関係を築けること以上の幸福もまた、ないのです。
そして、それを邪魔するのが、対人関係における恐怖症や緊張症です。
- 本当は仲良くなりたいのに、それができない。
- つまらない人間だと思われたくなくて、表面上の付き合いしかできない。
- 嫌われるのが怖くて、本音が出せない。
でも、無理して頑張る。その結果、疲れ果ててしまい、ますます人と関わるのがいやになる。
こういった悪循環を断ち切るには、どうしたら良いのでしょうか。
人が怖いメカニズム
まず、私自身、強烈な人見知りでした。誰かを紹介された時や、新しい職場での自己紹介、飲み会などほんとうにイヤでしたね。
人に干渉されるのが苦痛で、深い仲になることにものすごく抵抗がありました。
でも、おかしなことに、ほんとうは本音で話せる親友がほしい、パートナーが欲しいと渇望していたのです。
矛盾してますよね…。自分を理解して欲しいと思う一方で、自分を知られたくないという葛藤が同時に起こる。
こんな葛藤を20年もやっていれば、それは疲れます。ところで、この矛盾、もう少し詳しく見ていきましょう。
まず『自分を理解して欲しい』、ですが、これは人間の基本的な欲求なのでこのままで良いでしょう。
問題はもう1つの、『自分を知られたくない』というところです。
一体なにを知られたくないのでしょうか? また、知られてしまうとどうなるのでしょうか?
バレたくない心理
まず、人に知られたくないことですが、これは人それぞれだと思います。
例えば、私で言うと「つまらない人間だと思われたくない」というのが一番大きかったです。
「おまえといても楽しくない」こんな一言を言われやしないか…。一番怖くて、傷つくことがこれでした。
自分で自分のことを、魅力がない人間だと思っている。でも、それが証明されてしまうと、自分の中で”強化”されてしまう。
その結果、ますます自分が嫌いになるのです。
*バレたくない心理については、こちらの記事『幸せを拡大する人と、衰退する人の差』で詳しく解説しています。
人は何を怖れているのか
次に、では知られてしまうとどうなるのでしょうか?
実は恐怖症の先にあるのは2つしかありません。それは「死への恐怖」と「孤立への恐怖」です。
死への恐怖とは、癌を宣告されたり、災害や犯罪に巻き込まれた場合などに起こります。
これに対して、孤立への恐怖とは、拒絶や無視、仲間外れ、差別などに対する恐怖です。
人間は群れて生きてきました。その方が生き残る確率が高くなることを、遺伝子レベルで知っているのです。
なので、孤立することも、結局は「死への恐怖」につながっていきます。
つまらない人間、魅力のない人間だと評価される。その結果、人から嫌われたり、相手にされなくなる。
そうなっては生きていけないことを、人間は潜在的に知っています。
なので、そうなるくらいなら、自分を押し殺してでも相手に合わせて無難に振る舞う。
せめて嫌われないように、もしくは、つまらないけど「いい人」と思ってもらえるようにする。
このように、私たちは生き延びるために孤立を怖れ、それよりもましな選択をするのです。
対人恐怖はゼロにはならない
最後に…。対人恐怖というのは、完全に無くすことはできません。
なぜなら、脳や細胞、遺伝子の機能が正常に働くのであれば、「他者への警戒」は自分を守る行為だからです。
脳を損傷して、この機能が働かなくなると、人間は社会生活が困難になります。
*参考ページ『扁桃体の損傷により「恐怖」を感じることができない女性』(サイト外リンク)
この女性は、ヘビを見ても、ナイフを突きつけられても、恐怖を感じることなく近づいてしまうのです。
当然ですが、勇敢なわけではなく、ただ危険を察知する能力が欠如しています。
恐怖という感情に限らず、喜怒哀楽というのは、あなたがより生き延びるために存在しているのです。
なので、恐怖心は無くすのではなく、大切なのはバランスです。
本来そこまで恐怖を感じる必要がない状況で、過剰反応してしまう。
これが、バランスを欠いている状態なので、ここを改善することで対人恐怖症は緩和していきます。